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アートのコツ 「アートを学ぶコツ」


「アートのコツ」は、アートホリックな方々にアートを楽しむコツを教えていただくコーナーです。今回は飯島聡子さんに「アートを学ぶコツ」を教えていただきました。

芸術学を大学通信教育に学ぶ

ちょうど1年前の今頃は、大学の卒業研究に躍起になっていた。12000字の卒業論文を書くというプレッシャーは、“カオナシ”のようにいつも傍らに立っていたし、先に進めず煮詰まった時には、天使が降りてきて耳元でささやいてくれないかと期待したこともあった。こんな幻覚や妄想を抱えながら卒論を仕上げ、今年3月に卒業証書が届いた。5年の学生生活が終わった。
京都にある芸術大学を選んだ。この通信教育部の芸術学部には3つの学科があり、作品を制作する〈美術学科〉と〈デザイン学科〉、私は理論的研究をする〈芸術学科〉に入学した。今回はその学生生活を振り返り、簡単に紹介しよう。通信教育の大学ではテキスト科目とスクーリング科目によって単位を積み上げていく。

例えば、各美術史(日本、ヨーロッパ、アジアなど)は、テキスト科目とスクーリング科目が重複しているが、いずれか一方、両方の受講も可能だ。とにかく通信教育は本人の自由裁量度が大きい。受講科目によっては、「指定科目の単位を修得のこと」条件がつくこともあるので予めチェックし、履修計画をたて、翌年も見込んで長期戦に臨む感じだ。計画の頓挫という経験も含めて履修を進めた。
テキストのレポートでは、図版と向き合ってじっくり観察し言葉にすることが求められる。美しいと感じたなら、それは何故か。自ら問いを立てて答えていかなければならない。
スクーリングでは、各地の地域遺産をたずねたり、博物館や美術館の見学も組み込まれることがある。また美術館の学芸員、ギャラリーの主宰者が講師となり、美術の現場がリアルに授業に映し出されることもあった。受講者と情報交換をして面白い科目を薦め、モチベーションを高めあったり、学内にはいくつかギャラリーがあって、通学部の学生や活躍中の作家の作品を昼休みにまわった。余裕があれば京都市内の美術館やギャラリーを回るなど楽しみも多い、非日常であったことも間違いない。

〈芸術学科〉について「芸術の持ってきた意味とこれからの社会で果たしうる役割を考える」と学校は案内している。私の場合は、芸術がどのように語られてきたかに関心が集中し、卒業研究では地域を絞り、芸術を語る場―美術館―の生成について考察した。芸術は決して、均質なまなざしに晒されているわけではない。われわれは時代や場所といったさまざまな影響のもとで芸術を語っているのだ。その当たり前のことを5年かけて学んだといえるだろう。

参考までに
・単位修得のシステムやスクーリングのプログラムについては学校によって異なり、また年度によって変更されることがあるのでご注意を。
・毎年1月下旬から3月にかけて、通信制の大学が集まり全国各地で説明会を開催しています。パンフレットの入手と各大学関係者と面談が可能。
・「私立大学通信教育協会」でweb検索が可能。
・通信教育は楽しいだけではありません。読み物としても面白いのは、『大学通信教育に学ぶ人のためのスタディガイド』慶應義塾大学出版会(2005年)、在学中には救われ、卒業して読み直したら笑いも出る。つまり、通信教育に学ぶことについてのリアルなガイドと言えましょう。

飯島 聡子
『乱歩と名古屋』を一読、都市の表象に興味わく

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